アダム・ウェストはアメリカの仮面ライダーであり、アメリカの藤岡弘、であった。

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アダム・ウェスト(88歳没)は1966年から放映された人気テレビ番組『バットマン』のブルース・ウェイン役を演じてバットマンの実写化の成功に貢献した人物である。

アダム・ウェストの後もバットマンは多くの俳優が演じたがアダム・ウェストが演じたバットマンはまるで1971年に藤岡弘(71歳)が演じた仮面ライダー1号のように多くの人の心の中に残っており、人生の多くの時間をバットマンに関係する仕事に捧げた事からも藤岡弘を彷彿とさせる分部が強く、まさに元祖バットマンと言えばこの人と言うような人物である。

当たり役のヒーロー像に、後のキャリアが縛られて一度は拒絶しながらもやはりバットマンというイメージを恐らく本人の中で受け入れたであろう事も藤岡弘、のイメージと私は個人的に重ねてしまう。
アダム・ウェストは彼が演じた品性正しいバットマンのイメージに違えず性格についての悪評はほとんどなかったようで、バットマン以外に当たり役に恵まれなかったと多くの人に思われながらもその性格からお金に困らない程度の仕事には恵まれていたようで晩年も衣食住に困らずに生涯を終えた。

仮にアダム・ウェストが何らかの形でスキャンダルでも起こせば、人々が信じた古き良きアメリカの俗に言うアダム・ウェストバットマン像にも傷がついていたと思うが、アダム・ウェストはスキャンダルらしいスキャンダルは生涯で特には起こさなかった。

後のキャリアがあまり華々しくはなくてもアダム・ウェストは悪党を懲らしめるクレイジーな金持ちと言う、ちょうど仮面ライダー1号のような今となっては間の抜けたあの当時のヒーローを藤岡弘、と同じく本人の性格の良さで演じ切った名優の一人である事は間違いがない。
今となれば技術や演出はチープになっても、ヒーローはいると信じさせてくれる説得力を持った演技を見せてくれたアダム・ウェストは生涯スキャンダルらしいスキャンダルを起こさずキャリアのピークはあっても人々が哀れに思うほどの身の崩し方もせず、多くのバットマン作品に関わった事からも彼のイメージは画面から抜け出してきたバットマンのような見方でファンからは見られてきたものであると思う。

先ほどから例にあげている日本の俳優である藤岡弘、も日本の特撮俳優の中では大変に成功した俳優の一人であり、やはり現在に至るまで藤岡弘、と言えば一番強いのは恐らく仮面ライダーのイメージなのだが、歳をとるほどに飾らなくなった藤岡弘、という男はキャリアを気取らず藤岡弘、という存在は今や仮面ライダーと同じくらいに認知されていると私は思う。

藤岡弘、という俳優は仮面ライダーを演じた俳優ではなく、仮面ライダーと同じくらい存在の大きい藤岡弘、という存在なのだ。
初代ウルトラマンを演じた俳優も強い色がつくことから後のキャリアに苦労することも多い昭和のヒーロー像を演じた俳優の中では大成した方だが、演じた俳優の名前を知らない人も多いはずでありこれは大変な偉業である。

アダム・ウェストは日本が昭和だった時代にヒーローを演じた俳優の中では間違いなく幸せ者だが、代表作バットマンの人生を彼自身はどう思っていたのかは知りはしない。

しかしバットマン以外に当たり役に恵まれず、その後ある程度の裕福さを保った彼の生き方にファンはバットマンその人を連想できたのだから少なくとも彼のファンは大変に幸せだっただろう。

日本では仮面ライダー藤岡弘が、アメリカではバットマンアダム・ウェストがまるで画面から抜け出してきたようにそのイメージを強く背負った人生を送った(送っている)。

しかし不思議な事に日本のウルトラマンやアメリカのスーパマンはやはりどちらかが役柄か本人に押しつぶされ画面から現実に抜け出してきたヒーローのような存在感は私は個人的に感じはしない。
バットマン仮面ライダーは改造人間にされた人間の悲しみに悪党に親を殺された人間の悲しみを背負っている、しかしウルトラマンとスーパマンは地球人ではない宇宙人という存在。
映像の中の人間の葛藤が演じた俳優に乗り移り、その葛藤を抱えた人間の存在を強く信じるファンの心が彼等に演じた役柄の一部の存在感を与えたのだろうか。