【ネタバレあり】福満しげゆき初期作品集 「娘味」感想

 

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最初の肉は父さんとその愛人でした…

映画「フリーキッチン」2015年11月28日(土)よりユーロスペースにて公開 
監督記号/中村研太郎
原作/福満しげゆき「娘味」より
出演 /森田桐夫、大貫真代、延増静美

 

当時の作者の中二病的世界観全快に物語はつづられる。
 
人肉を頑なに料理する母に育てられた少年を描いた「娘味」に、妻に見捨てられたサラリーマンの路上殺人から物語のはじまる「景色のキレイなトコにいこう」。 
 
福満作品に代表される世知辛い世の中を生きる人々だ。 
 
2つのオムニバスが終わると突然福光しげゆきの真相心理を反映するかのような物語に突入する。
福光しげゆき幻の短編集「10年たって彼らはまた何故ここにいるのか…」に収録されている物語でこの「娘味」にも再び収録されている。
 
物語の冒頭、作中の言葉を借りれば「なんだか寂しい所」にヤクルト12本で日本の人に買われたロボットと福満しげゆきを思わせるような青年が座っている。 
二人の会話からはどうやらここは「やめた人が来る場所」であるらしいことが分かる。 
 
この世界に来る前のヤクルト12本で買われたロボットのバッグボーンは比較的詳しく語られるのだが、もう1人の青年の方は断片的にしかバッグボーンが語られない。
 
 しかし断片的にしか語られなくても今までに福満作品を読んできた人には分かる。 
福満作品にもっとも大く登場した私達のよく知る″彼″に違いない。 

このロボットと青年のいる「やめた人が来る場所」にある女性が迷い込んでくる。
そしてこの世界を軸に物語は進んでいく。
 
しかし最後まで青年たちはこの世界から立ち退く様子がないがその後彼らはどうなったのか。

書き下ろし漫画「さらに10年たって彼らはまた何故ここにいるのか…」にはそんな彼らのその後が描かれる。

相変わらずヤクルト12本で買われたロボットとかつて青年だった男はこの世界にいて「でも…もう子供が2人もいるし…」などと言いながら相変わらずロボットに愚痴を言っている。

しかしこの世界に昔迷いこんだあの女性の姿はない。それはそうだ女性は福満しげゆきの初恋の人を投影したキャラクターで、「家の妻ってどうでしょう?」 の妻と出会う前の存在なのだから、 もうこの世界から去ってしまっのだろう。

ここは福満しげゆき初期作品集 「娘味」という精神世界。